FIDE Candidates 2024一般セクション1Rの結果と内容

 一般セクションは1Rは4試合とも引き分けでした。結果は全試合引き分けでしたが、決してイージードローではなく、トーナメント立ち上がりの様子見という側面もあったものの息を飲む攻防がみられました。

 Caruana, Fabiano(2803) ½-½ Nakamura, Hikaru(2789)
 Abasov, Nijat(2632) ½-½ Nepomniachtchi, Ian(2758)
 Firouzja, Alireza(2760) ½-½ Rameshbabu, Praggnanandhaa(2747)
 Gukesh, Dommaraju(2743) ½-½ Gujrathi, Vidit(2727)

【第1ラウンド終了後のクロステーブル】

No. プレイヤー名 1 2 3 4 5 6 7 8 得点 順位
1 Caruana, Fabiano * * . . . . . . . . . . . . ½ . 0.5 1 – 8
2 Abasov, Nijat . . * * . . . . . . . . ½ . . . 0.5 1 – 8
3 Alireza, Firouzja . . . . * * . . . . ½ . . . . . 0.5 1 – 8
4 Gukesh D . . . . . . * * ½ . . . . . . . 0.5 1 – 8
5 Vidit Gujarathi . . . . . . . ½ * * . . . . . . 0.5 1 – 8
6 Praggnanandhaa R . . . . . ½ . . . . * * . . . . 0.5 1 – 8
7 Nepomniachtchi, Ian . . . ½ . . . . . . . . * * . . 0.5 1 – 8
8 Nakamura, Hikaru . ½ . . . . . . . . . . . . * * 0.5 1 – 8

 第2ラウンドのペアリングは次の通りです。
 Nakamura, Hikaru(2789) – Gujrathi, Vidit(2727)
 Rameshbabu, Praggnanandhaa(2747) – Gukesh, Dommaraju(2743)
 Nepomniachtchi, Ian(2758) – Firouzja, Alireza(2760)
 Caruana, Fabiano(2803) – Abasov, Nijat(2632)

 4試合ともそれぞれ簡単にご紹介します。


□ Caruana, Fabiano(2803)
■ Nakamura, Hikaru(2789)
FIDE Candidates 2024(1), Tronto

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6.Bb5+ Nbd7 7.Nf5 a6 8.Ba4 b5 9.Bb3 Nc5 10.Bg5(図1)

図1 10.Bd5まで

 白はビショップをd5に持っていくのを狙っています。白がやや押しています。

10…Bxf5 11.exf5 Be7 12.Bxf6 Bxf6 13.O-O e4 14.Nxe4 Nxe4(図2)

図2 14…Nxe4まで

15.Re1
 本譜の代わりに15.Qd5!?とクイーンでナイトを狙うのも面白そうです。15…Ng5?とナイトを逃がすと 16.Rae1+ Kf8 17.h4で黒はキャスリングができなくなった上にナイトも取り返されて白優勢なので、ここでナイトを諦めて15…O-Oとキャスリングする必要があります。以下16.Qxe4(図3)で白がやや優勢です。

図3 16.Qe4まで

15…O-O! 16.Rxe4
 白が主導権を握っていて、黒にとって正確なディフェンスが要求される局面です。

16…Bxb2
 黒陣の白マスの弱点が目立ちます。

17.Rb1 Bf6 18.Qd5 Rc8 19.Qb7 Rc5 20.Qxa6 Rxf5 21.Rd1 d5 22.Rb4 Bc3 23.Rxb5 Rxf2(図4)

図4 23…Rxf2まで

24.Rbxd5
 24.Kxf2?!とこのルークを取ってしまうと24…Qh4+ 25.Kg1 Bd4+ 26.Kh1 Be5でパペチュアルチェックを避けられなくなってしまうので、主導権を握っている白としてはもったいないです。

24…Qh4 25.Qd3 Rf6 26.g3 Qb4 27.Kg2 Bb2 28.Rf5 g6 29.Rxf6 Bxf6 30.Qf3 Qe7 31.a4 Kg7(図5)

図5 31…Kg7まで

32.a5
 ここは代わりに32.Bd5とした方がよかったかもしれません。

32…Ra8
 白の攻めを受け切って黒はほぼ互角に持ち込めたと言えそうです。

33.Rd5 Ra7 34.Rb5 Qd8 35.Rd5(図6)

図6 35.Rd5まで

35…Qc7
 35…Qa8?!とaポーンに圧力をかけても良さそうに見えますが、これに対しては 36.a6!という強力な応手があります。
36…Rxa6とaポーンを取ると、以下37.Rd7 Qxf3+ 38.Kxf3 Bc3 39.Rxf7+と進み、異色ビショップながら白の主導権が強く黒にとって非常に苦しい展開になってしまうので、このa6のポーンの対応にも苦慮してしまいます。

36.h4 Rxa5 37.Rxa5 Qxa5 38.Qb7 Qd8 39.Qxf7+ Kh6 40.Kh3 Qe7 41.Qc4 Qe3 ½-½(図7)

図7 41…Qe3まで

 黒は1ポーンダウンながら異色ビショップで、クイーンも十分アクティブになっているのでここで引き分けの合意がなされました。手に汗握るゲームだったと思います。
 

□ Abasov, Nijat(2632)
■ Nepomniachtchi, Ian(2758)
FIDE Candidates 2024(1), Tronto

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.Bg5 Be7 5.e3 h6 6.Bh4 dxc4 7.Bxc4 c5 8.Nf3 cxd4 9.exd4 Nc6 10.O-O O-O 11.Re1 a6 12.Rc1 b5 13.Bb3 Bb7 14.Bxf6 Bxf6 15.d5 exd5 16.Nxd5 Na5 17.Nxf6+ Qxf6 18.Qd4 Qxd4 19.Nxd4 Rad8 20.Rcd1 Nxb3 21.Nxb3 Bd5 22.f3 Bxb3 23.axb3 Rxd1 24.Rxd1(図8)

図8 24.Rd1まで

 黒に若干の主導権があるもののほぼ互角のルークエンディングです。

24…Rc8 25.Rd2!
 25…Rc2とセブンスランクを取られてしまうのを防いでいます。

25… Kf8 26.Re2 Rd8 27.Kf2! Rd4 28.Re4
 形勢は完全に互角です。
 
28…Rd1 29.Re1 Rd2+ 30.Re2 Rd4 31.Re4 Rd1 32.Re1 Rd2+ 33.Re2 Rd4 34.Re4(図9) ½-½

図9 34.Re4まで

 お互いこれ以上の進展を望めず、ここで引き分けの合意がなされました。


□ Firouzja, Alireza(2760)
■ Praggnanandhaa Rameshbabu(2747)
FIDE Candidates 2024(1), Tronto

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5 Be6 9.c3 Be7 10.Bc2 Bg4 11.Qe1 Nc5 12.Nbd2 Ne6(図10)

図10 12…Ne6まで

13.Nd4とされるのを防いでいます。

13.Kh1 Bh5 14.Nb3 Bxf3 15.gxf3 Bg5 16.Rg1 Bxc1 17.Nxc1 Qh4 18.Rg4 Qh5 19.Nd3 O-O 20.Qe2 f5 21.exf6! Rxf6 22.f4 Rh6 23.f3 Rf8 24.Qf2 Rff6 25.Re1 Qf7 26.Qg3 Rh5 27.a4 Rfh6 28.Re2 Rh3 29.Qe1 Rxf3 30.Nc5(図11)

図11 30.Nc5まで

30…Qh5(図12)

図12 30…Qh5まで

 30…Nxc5?とナイトを取ってしまうと31.Re8+で黒敗勢です。ここでは30…Nf8!とキングの守りを厚くしておくのが手堅かったようです。

31.Nxe6
 ここではeファイルだけにこだわらず、31.Reg2!とgファイルも活用するのが強力だったようです。 31…Nxc5都ナイトを取ると32.Rxg7+ Kf8 33.Rg8+ Kf7 34.Qe8+ Kf6 35.Rf8+で白勝勢です。また31…Rxf4?に対しては
32.Qxe6+とクイーンを犠牲にするのが非常に強力で以下32…Rxe6 33.Rxg7+ Kf8 34.Nxe6+ Ke8 35.Nxc7+ Kf8 36.Ne6+ Ke8 37.Nxf4で駒得のため白勝勢です。この2つの変化に黒陣の脆さがよく現れていると言えるでしょう。
というわけで、31.Reg2!のあと、黒としては31…Ne5とナイトを犠牲にしてeファイルを閉じるくらいしかないですが、単純に32.fxe5とされて白に強力な主導権を握られてしまいます。

31…Qxg4
 ここまで駒がさばけると、まだあやはあるもののほぼ形勢互角です。

32.Ng5
 黒のクイーンがh3に来るのを防いでいます。

32…Ne5(図13)
 白が何も手を打たないでいると、黒はクイーンでf4の白ポーンを取って勝勢です。

図13 32…Ne5まで

33.Rxe5
 両者最善を指せば結果は本譜と同じく引き分けですが、ここでは33.Bb3!?とした方がより黒にとって慎重な対応が必要だったようです。というのも安易にf4のポーンを取ってしまうと33…Rxf4? 34.Rxe5 c6 35.Rxd5!でも33…Qxf4? 34.Bxd5+ Kh8 35.Nxf3でどちらも白勝勢となってしまいます。この2つの変化では白のビショップの働きが重要になっているので33…c6とd5の守りを固めてこのビショップをこれ以上戦いに参加させないことが絶対となります。以下、34.Rxe5 Rxh2+ 35.Kxh2 Qxf4+ 36.Kg2 Qg4+ 37.Kh2 Qf4+ 38.Kg2 Qg4+ 39.Kh1 Qh5+ 40.Kg2 Qg4+と本譜とほぼ同じ形でパペチュアルチェックとなります。

33…Rxh2+! 34.Kxh2 Qh5+ 35.Kg2
 36.Re8+からのチェックメイトが狙いですが、黒は本譜の通りパペチュアルチェックで引き分けに持ち込めます。

35…Qg4+ 36.Kh1 Qh5+ 37.Kg2 Qg4+ 38.Kh1 Qh5+ 39.Kg2(図14) ½-½

図14 39.Kg2まで

 パペチュアルチェックで引き分けです。
 

□ Gukesh Dommaraju(2743)
■ Vidit, Gujrathi(2727)
FIDE Candidates 2024(1), Tronto

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.e3 Nf6 5.Nf3 Nc6 6.a3 a6 7.dxc5 Bxc5 8.b4 Bd6
 黒はイコアライズ(後手の不利を解消して互角の形勢に持ち込むこと)に成功しています。

9.Ra2 Ne5 10.Rd2 Nxf3+ 11.gxf3 O-O 12.Bb2 a5 13.cxd5 e5 14.Nb5 axb4 15.Nxd6 Qxd6 16.axb4 Qxb4 17.Qc2(図15)

図15 17.Qc2まで

17…Bf5とされるのを防いでいます。

17…Bg4!
 面白いサクリファイスです。狙いは空いたc8のマスへ18…Rfc8とルークを回すことです。

18.Bc3
 g4のビショップは取れません。18.fxg4?と取ってしまうと、以下18…Rfc8 19.Qd3 Ra2(図16)で白は押し込まれて負けてしまいます。

図16 19…Ra2まで

18…Qa3 19.Bb2(図17)

図17 19.Bb2まで

 白のビショップペアが守りで力を発揮しています。

19…Qb4(図18)

図18 19…Qb4まで

 次の20…Rfc8の狙いが強力です。

20.Bc3 Qa3 21.Bb2 Qb4!(図19) ½-½

図19 21…Qb4まで

 黒に主導権があるようにも見えますが、ここは引き分けに落ち着きました。