ポーンを持っている側が、ポーンを進めてただクイーンに昇格させるだけでは、たとえ手数的に昇格できたとしてもルークを持っている側にメイトスレット(チェックメイトの狙い)を絡めて手を作られて不十分なことがあります。その場合別のアイデアがあります。
1.Rh2+ Kc1 2.Kc3(図2)
白は黒ポーン昇格の直後に3.Rh1#でチェックメイトを狙っています。
2…b1=N+!
ナイトの方がルークより弱いですが、白はナイトのせいでオポジションを取れないので、ルークを持っていてもチェックメイトにできないというのがポイントです。このようにわざとクイーンより弱い駒に昇格することをアンダープロモーションといいます。
3.Kd3 Na3 4.Ra2(図3)
4…Nb1!
ここでは少々注意が必要です。4…Nb5?としてしまうと、5.Ra6とされてツークツワンクに陥ってナイトを取られてしまいます。実際、5…Nc7に対しては6.Rc6+、5…Kd1に対しては6.Ra1#、5…Kb1に対しては6.Rb6とできるので、有効な手がありません。ナイト対ルークのエンディングでは、ナイト側はキングとナイトを離してはいけないということを覚えておいて下さい。
後はキングとナイトを離さずに維持すればしっかり守り切れます。
ところで、図1の局面で、実はもう一つ引き分けを取れるアイデアがあります。手順は次のようになります。1…Kb1! 2.Kb3 Ka1! 3.Rxb2(図4)でステールメイトです。
白がステールメイトを嫌うとクイーンができてしまいます。このようなステールメイトを絡めた引き分けの手筋を使えるのはナイトポーン(b、gポーン)の時だけで、ビショップポーン(c、fポーン)やセンターポーン(d、eポーン)の時はアンダープロモーションを使うしかありません。
なお、ルークポーン(a、hポーン)の時はアンダープロモーションを使っても引き分けにはできません。次の局面を見てみましょう。
1.Kc4 a2 2.Kb3 a1=N+ 3.Kc3(図6)
黒はツークツワンクに陥っています。ナイトをどこに動かしても取られてしまいますし、キングが動いたら、Rh1#となってしまいます。ルーク対ナイトの局面では、ナイトの動けるマスが十分に確保されていることが重要になってきます。
アンダープロモーションで守り切る例はこれくらいにして、次回はキングの使い方に焦点を当てたいと思います。
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